心のノート

下手っぴな言葉。

スタートライン

 

夏休みになり、時間に余裕ができた私とは対照的に、相変わらず休みなしの恋人。久しぶりの休みにデートに誘うのは気が引ける、そう思って連絡だけとっていた。そのときにポロっと出てしまった。

"最近、恋人との接し方がわからない" と。

すると恋人も同じように感じていたようで、実は俺も、という返事がきた。やっぱりこの違和感は、気のせいでも何でもなかったんだなと確信に変わった。

 

「お別れしよう」

 

あっさりと終わってしまった。

涙なんて出なかった。信じたくなかったから。"一年記念のお揃いのもの、買いに行こうね" この約束は? "ここに行こう、あそこにも行こう" 計画していたことは?

何もかもが終わってしまったなんて私は到底思えず、受け入れられなかった。でもこれ以来、携帯がなることはなかった。

 

喧嘩をしたことがない=仲が良い、良い関係

そう思っていた私は、このときにやっと気づいた。仲が良いから喧嘩をしないんじゃない、お互いが自分を出し切らずに接しているから喧嘩をしなかった。ぶつかりそうになったら制御して、我慢していたからぶつからなかった。

今ならわかる。喧嘩をしない関係だったから、こんなふうになってしまったのだと。

 

それが恋人からもらった最後のメッセージ。この一年と少しの時間を、絶対に無駄にしてはいけない、そう誓った。

 

カウントダウン

 

「好きかどうかわからない」

突然、放たれた言葉。私は受け止められなかった。どうして?こんなに仲が良くて、喧嘩もしたことないのに?頭の中が真っ白になった。

話していると、とりあえずはいつも通りでいてほしいと言う恋人。私は、素直に寄り添った。いつも通り接し、いつも通りたわいもない話をした。

でも、"いつも通り" を意識しすぎて、いつも通りになんていかなかった。デートもしなくなった。

 

一年記念日の日、お互いが休みになったので久しぶりに会うことになった。素直に嬉しかった。迷いながらも作った一年分のアルバムと、お揃いで買った靴のプレゼントを持って。

デート中は今までと同じように笑い合い、楽しい時間だった。あっという間に時間が過ぎていった。

いっぱい楽しんだ後は、プレゼントとありがとうの気持ちを渡した。すると、恋人は私に背を向け始めた。私はどうしたのか全くわからなかったけど、よく見ると目から涙が零れていた。

 

「寝子は俺のこと好き…?好きかわからないって言われてどう思った…?ごめんね。俺、遠距離がつらい… 今まではそんなふうに思わないくらい会えていたけど、今週会えなかった、来週も会えないって考えるとしんどくなるんだ」

私は、自分の気持ちしか考えていないことにやっと気づいて、これから変わっていこう、帰り道にそう思った。

でも、もうそれは遅すぎた。

 

破れた1ページ

 

これは三年前のこと。

 

嬉しいことも悲しいことも、腹が立つことも楽しいことも、毎日、嫌な顔ひとつせず聞いてくれる友達がいた。寂しがりの私にいつも寄り添ってくれる友達。「俺が彼氏から奪っちゃおうかな」そんなことを言う友達。

私はその友達と一緒に過ごすことを選び、恋人になった。

 

それから一年間、毎日が楽しくて、キラキラ輝いていて、これ以上ないくらいに幸せだった。

あの日が来るまでは。

 

初めて自分ではない誰かにお弁当を作ってピクニックをしたり、浴衣を来て花火大会に行ったり、 ペアルックをして遊園地に行ったり、お互いの誕生日にはサプライズでお洒落なレストランに行ったり、イルミネーションを見たり、友達カップルと鍋をしたり、京都で着物デートをしたり。

四季を感じながらのデートはいつも楽しかった。喧嘩をしたこともなかった。

私が幸せだから恋人も幸せ。私はそう思い込んで全く気づかなかったけど、二人にはどんどん壁ができていた。